本委員会の沿革

 「地盤」は,構造物を支える基礎(地盤)として,また,埋立や築堤など土構造物の構成材料(地盤材料)として不可欠なものであるが,地域性が強く工学的特性も千差万別であり,使用に当たって必ずしも所要の条件を備えているわけではない。「地盤改良」は,このような地盤を使用可能な状態にし,その状態を維持するために行う物理的,化学的および生物学的な処理のことである。最近では,建設工事に対する制約条件や構造物の立地条件も厳しくなってきたため,より過酷な条件が地盤に要求されることが多く,それに応じて様々な特徴,種類の「地盤改良工法」が開発適用されている。
 地盤改良部門委員会は,このような地盤改良を実施する上での種々の間題点について研究調査を行い,その適正な利用を促進することを目的として1962年11月に「土質安定材料委員会」として設立されたもので,1998年1月に昨今の技術的社会的ニーズを鑑みて現在の名称に改称した。地盤改良工法に関連する分野は極めて広く,構造物基礎,道路や鉄道の路床路盤,トンネル・ダム,斜面保護と安定,水利構造物の覆工,埋立・海洋地盤,地盤環境の保全など,土木,建築,農業土木,鉱山資源,環境衛生などの各分野にわたる。さらに,その基礎となる学術・技術分野も上記の応用工学分野のほかに,物理学,化学,力学,生物学,地質鉱物学,造園学など広範囲の基礎知識が必要であるため,本委員会は様々の分野を専門とする委員により構成され,地盤改良に対して多岐にわたる観点から調査,研究を行ってきた。

主な活動

 本委員会の活動は,地盤改良の工法と材料に関する話題提供と研究討議を中心にした「研究委員会」,隔年で開催している「地盤改良シンポジウム」,「建築基礎研究会」,「地盤環境研究会」,ならびに「地盤改良に関する技術評価事業」の推進から成り立っている。
 「研究委員会」の開催は2010年4月時点で278回を数え,2009年度に延べ4回開催した。話題提供のテーマは次のとおりで,地盤改良に関わるテーマだけではなく,今後の研究展開の可能性を探るため建設分野全般から広範な話題を取り上げている。
(1) サヌカイト(讃岐岩)の聖地への誘い[第275回部門委員会:高松市]
(2) Compensation Grouting[第275回部門委員会:高松市]
(3) シュレッダー紙片を混合したため池底泥の固化処理[第276回部門委員会:京都市]
(4) 土の三軸圧縮試験における不確かさの評価・算定方法[第276回部門委員会:京都市]
(5) 流動化砂の圧入による地盤の締固め工法[第277回部門委員会:京都市]
(6) 自然由来の重金属問題の現状について[第277回部門委員会:京都市]
(7) 自然由来の重金属汚染土壌の対策技術の成否事例[第278回部門委員会:あわら市]
(8) 省エネ型ナノ粉体製造装置の研究開発[第278回部門委員会:あわら市]
(9) 自然由来重金属を含有する土への対応と土壌汚染対策法[第278回部門委員会:あわら市]


主な成果

 本委員会における過去3年の主要な成果を以下に記す。
(1) 学会誌「材料」地盤改良大特集号(2008年1月)
(2) 第8回地盤改良シンポジウム開催(2008年11月)
(3) 学会誌「材料」地盤改良大特集号(2010年1月)
(4) 「実務者のための戸建住宅の地盤改良・補強工法 −考え方から適用まで−」書籍出版(2010年2月)
 近年は特に,社会情勢の変化も著しく,また,関連科学技術の進歩はめざましいものがあった。地盤改良技術も,単一機能(mono-functional)から多機機能(multi-functional)への変化,表層から深層を経て大深度改良への移行,輸人技術から自前技術の開発,さらに輸出技術への発展,理論の拡張から現実対処,さらに環境保全対策への展開,天然材料から人工材料,廃材の再利用へと展開を示している。また,日本各地で頻発している地震や台風における被災状況にみられたように,防災対策としての地盤改良工法の重要性が再認識されている。このような状況を鑑み,今後も工学的・社会的に重要度の高い問題を取り上げ,専門的かつ技術的な調査,研究,討議を経て,地盤改良のみならず広く地盤工学・建設分野の発展に寄与することを目的に委員会活動を推し進める所存である。

技術評価制度

 「技術評価事業」は,日本材料学会が実施する技術評価証明制度の最初の試みとして,地盤改良に関する技術を対象として2000年4月より本委員会が中心となって活動開始したものである。本制度は,材料学に関する各種技術に対して学会としての客観的立場から,その有用性や技術レベルを公正に評価し,所定の基準を確保している技術を学会として公式に認証するものである。現在,評価の対象としている材料,技術は以下のとおりである。
(1) 地盤改良技術に関わる新素材・新材料
(2) 地盤改良に関わる技術または工法
(3) 汚染地盤の診断技術・汚染地盤修復技術
(4) 廃棄物の地盤材料としてのリサィクル技術
 本制度により,各種技術開発の活性化・技術水準の向上を促すとともに,ユーザーに対して,信頼できる技術を紹介することにより,技術保有者とユーザーの橋渡し,ならびに優れた技術の普及という観点からも貢献が期待できると考えてぃる。2010年4月現在,11件の技術を認証しており,評価証明の有効期間は5年であり,大半が1回目の更新を終えている。

新規加入のご案内

 本委員会への加入については本人の申し出,現委員の推薦に基づき委員会の承認を得ることになっており,また,委員会運営のための資料作成費として,会社からの加入会員の場合年額20,000円,学校,官公庁からの個人会員には年額2,000円を頂いている。関連分野の研究者,技術者の方々の積極的なご参加ならびにご協力を願う次第である。